メールマガジン「フィンランド」第4号 2007年8月

切手の写真:2007年6月、ヘルシンキを訪れたノルウェーのハラール王とソニア王妃を歓迎する子供たち。

 By Maya and Kari Gröhn

 

ノルウェーの旅

 フィンランドの話を始めたばかりなのにもうノルウェーかと思われるかもしれませんが、死ぬまでに一度ノルウェーのフィヨルドを見てみたい−なぜか漠然とそう思っておりました。
 おそらく北の果てへのあこがれがフィヨルドと重なっていたのでしょう。そしてフィンランドにいればその夢も簡単にかなうことに気がつきました。お得なパックツァーがいくらでもあるのですから。

 選んだツァーは、7月10日−15日ヘルシンキからトゥルクに行き、夜の9時出航の船でまずストックホルムへ − 翌朝から Oslo、 Gol、 Oppheim、 Lom、Hamarへと連日515km、390km、380km、540kmというバス旅行です。

 

オスロ港。ヨットの向こうに見えるのは古城と城砦。

 北欧の旅ではパスポートを全く必要としないことがわかりました。トゥルクからストックホルムへの船旅もただするすると出口を出るだけ、スウェーデンからノルウェーへの国境などそこが国境だと教えてもらわなければ通ったことさえ気づかずに終わったかもしれません。
 ただ、あんなに晴れていたというのにスウェーデンの国境を超えたとたん雨に見舞われてしまい、さすが水の国ノルウェーかと感心させられました。
 バスが走るのは幹線道路E18。フィンランドでもスウェーデンでも、ノルウェーでもひたすらその標識に沿って進みます。

 

 オスロにはかの有名なコンティキ号の博物館などもありますが、今回は見る時間がありません。それでもせっかくオスロに来たのだからというので、バスは高台にあるスキージャンプ場に連れていってくれました。そこに立っている銅像。まるで山岳救助隊の隊長かと思ってしまいますが、実は先代の国王です。
 国王はスキーが大好きで冬になるといつもこのような質素なスキー具をつけて山中を走り回っていたそうです。一緒に走っている犬がプードルというのが可愛らしい。
 見上げているのが私。なぜか一緒にカメラに収まってしまった横の男性はバスで隣り合わせになったご夫婦の旦那さんです。

 

 偶然ですが、私たちがバス旅行を決めた数日後にノルウェーの国王夫妻がフィンランドを訪れるというニュースが入り、カリはその日カメラをもって職場に出かけました。この写真はそのときのものです。
 横に立っておられるのはハロネン大統領です。

「かつて私もまた難民であった」と語る王。第二次大戦中、父王に連れられて米国に亡命したのはわずか2歳の頃だったとか。

 

 

 ノルウェーに行くと決めたときから、きゅうに「ああ、山が見たかったのだ」ということに気がつきました。
 幼い頃は六甲山脈、そしてフィンランドに来る前までは比良山系に比叡山と、生活にはいつも山が側にありました。ラップランドを除けばフィンランドには山らしい山はありません。あるのはせいぜい「丘」です。
 緑がいたるところに満ち溢れていますからあまり気づかなかったのですが、あんまりフラットな景色ばかり見ていたせいか、山と聞くとやもたてもたまらなくなってきました。

 翌日はさっそくオスロを離れてオプハイムへ。フィヨルドを見る前に、まず雄大な滝に圧倒されます。

 

 Voringsfossen。見事な滝です。両側から流れ出た水流が川となってフィヨルドを縫うように走っていきます。このような水流がいたるところにあるとすれば水力発電が盛んになるのは当然の成り行きでしょう。
 つい先日、アムステルダムに住む従姉妹と電話で話しをしていたところ、「ちょっと、ひどいの。こっちは今月から電気、ガス、水道の料金が4倍になったのよ。そしたら早速セールスがやってきて、ノルウェーの電気を買いませんか、だって。」 
 こんな話を聞くと電気というのも八百屋の量り売りの感覚で買う時代になったようです。
 ちなみにノルウェーでは絶対に出ないとされていたオイルが発見され、潤沢なエネルギー源を得たノルウェーはいまやリッチな国になりました。もっともツァーのドライバーの話では、オイル産出国になったというのにガソリン代はフィンランドより高い、とのこと。 いまのところまだ生産コストが高くついてしまうようです。

 バス旅行ではドライブインの名物も欠かせません。今度のドライブインではワッフルがお薦めというガイドさんに従い注文しました。スメタナというロシア風のサワークリームにジャムを載せていただきます。ガイドのお薦めにはたいてい間違いがありません。これもそう。

 

 

 この日のお宿は家族的なホテル。つい先日、オーナーが亡くなったばかりだそうで、多少行き届かないところがあるかもしれないが勘弁していただきたいとガイドさん。また当日はイタリア人のツァーと一緒になるので、食卓は指定されたところを朝食でも同じように使ってほしいと細かい指示。
 で、オーナーは何歳だったのかというとこれが93歳。思わず失笑がもれます。それにしても93歳という老齢ながら最後まで現役で働いていたというからご立派。ランクは二つ星でしたが、なかなか趣のある素敵なホテルでした。

 

 

 さて、いよいよ今回の旅の目的、フィヨルド見物です。快晴ではありませんでしたが、うす曇のお天気はむしろフィヨルドには似つかわしいかもしれません。ガイドさんがバスの中でかけてくれたグリーグの「ペールギュント」が気分を盛りたててくれます。
 シベリウスの「フィンランディア」もそうですが、北欧の音楽は日本人にはとくに馴染みやすい気がいたします。そしてまた、ノルウェーの自然はむしろフィンランドより日本に近いような気がしました。おそらく山と水のせいでしょう。

 水の豊富なノルウェーはまた雪の国でもあります。同じ北欧でもフィンランドは氷の国です。これは意外でした。フィンランドには、ラップランドは別として、それほど雪が降らないのです。冬季オリンピックの開催が難しいのもそれが一因かもしれません。
 けれど、日本の豪雪地帯にお住まいの方ならおわかりでしょう。雪との戦いは並大抵のものではありません。その点、雪の少ないフィンランドはずっと暮らしやすいといえましょう。もっとも凍てついてつるつるになった冬の道を歩くのはとても楽とは言いかねますが。

 

 

 船はすべるように水面を進んでいきます。水面に映る景色のきれいなこと。いったいどちらが実像なのか。このような景色を子供の頃から見ているとすればきっと何かしらの影響を受けるに違いありません。

 現代はともかく、このようなところに昔住んでいた人々の暮らしはいったいどのようなものだったでしょう。ボートは今でも重要な交通手段となっています。

 ここはとくにユネスコの世界遺産に指定されているフィヨルドです。いたるところ滝が流れています。

 翌日は万年雪を頂く山に登ります。ふと窓から下を見ると道がない。バスが特別大きいこともありますが、道路の幅と車体の幅がほぼ同じ。対向車が来たときには大変です。そんな狭い道路をくねくねと折り曲がりながら山頂に着きました。
 写真が小さいのでわかりづらいかもしれませんが、真ん中にぽつんと見えるのはスキーヤーです。一年中スキーのできるこの地では各国からプロのスキーヤーたちが訪れるそうです。

 冬の景色に別れを告げて、また地上の夏に戻ります。苺の季節だったのであちこちに「苺狩り」の畑を見かけました。
 道路をとことこと横切る牛の群れ。思わず轢きそうになった羊たち。
 羊を見かけたときは一瞬白い石がころがっているのかと錯覚しました。毛を刈り取られてみんなまる裸だったからです。
 裸の羊をみるとなんとなく恥ずかしがっているような気がするからおかしい。

 最後の日、スウェーデンに戻ってくるとあちこちに国旗がかかげられています。プリンセス・ヴィクトリアのお誕生日でした。王女は30歳。すでに次期王位の継承が決まっています。


次回は「フィンランドのサマーコテージ」をお送りします。
 

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