メールマガジン「フィンランド」 第15号 2008年5月

By Maya and Kari Gröhn

 

バルコブオッコの花も終わりかけ、このあと森を飾る主役、スズランもそろそろ咲き始めています。フィンランドはこのところ少し肌寒く、太陽の光は初夏の輝きですが、気温は10度を切ることもあります。その太陽のまぶしさにだまされてつい薄着で出かけて震え上がったこともありました。フィンランドの人々はこういう気温の変動に慣れているのでしょう。昨日まで半袖でも今日は冬のジャケットなんて当たり前の日常なのです。

5月に入ると近くのストリートではよくマーケットが開かれています。先週の日曜日は「ヤルベンパーの日」ということで、出かけると路上は人にあふれていました。手回しオルガンの演奏者が目立ちましたが、あれはグループで来ていたのでしょうか。こんな小さな町の素朴な催しですが、ヨーロッパ各地から参加していたようです。マーケットのときはいつも各政党のグループが参加するのが特色です。緑の党の旗の横には共産党の赤、黄色はココムスか社民党か、といった具合に、政策はわかりませんが、少なくともマーケットに色を添えていることは間違いありません。

 

マーケットを一回りしたあと、サイクリングに出かけました。お天気がよければこの季節のサイクリングは最高です。ゆっくり時間をかけてツゥースラ湖を半周し、スイミング・プールとサウナでくつろいだあと、また40分ほどかけて家路に向かうのがこのところ私たちの日曜日の日課になっています。湖を一周するときは、途中でサイクリング・ロードを離れ、旧街道に入るのが常です。ここは昔ながらの家並みが残っていていつも季節の花が咲き乱れています。このお家の庭先に咲いているのはバルコブオッコ。手前の緑の葉っぱはスズランです。

 

朽ちかけた納屋の側で咲いているのはトゥオミ(Tuomi)の花で、これは秋になると真赤な実になります。
足元には勿忘草が。


勿忘草を見るとつい足がとまります。フィンランド語ではレンミッキと呼ばれます。

 


フィンランド映画 「エリナ」

監督:クラウス・ハロ

 さて、また映画のお話です。
 不屈のエリナは10歳の少女。結核のためしばらく学校を離れていましたが、やっと戻れることになりました。しかし、担当してもらう校長先生ミス・ハルミンとどうもうまくいきません。いや、最近では大好きなお母さんとすらうまくいかないこともあります。そのたびにエリナは「あんたの頑固な性格は死んだあんたのお父さんとそっくり」と言われ傷つきます。みんなの非難にたまらなくなったとき、エリナは沼地のいつもの場所に行き、亡くなったお父さんに話しかけるのが常でした。

 新任の若い先生はエリナたちにフィンランド語で話しかけようとします。それを見た校長先生は「この子たちにスウェーデン語を教えるのが私たちの仕事です」と釘をさします。これは戦後間もない1950年頃、フィンランドの国境に近いスウェーデンの小学校の話です。当時、スウェーデンに住むフィンランド人はフィンランド語を使うことを禁じられていました。

 厳格なこの先生は決して非情な人ではありません。彼女は貧しいエレナの母のためにエレナの妹に靴を用意してくれた人でした。また、信任の教師がとんでもないヘマをしてエリナを危険にさらした時にはカンカンになって新任教師を怒鳴りつけた人でもありました。彼女の信念は教育者として一生を捧げた自らの経験に基づいています。けれども、経験によりかかっているうちにいつしか器そのものが小さくなってしまったのでしょう。器が小さいゆえに、幼いながらこれもまた信念をつらぬこうとするエリナが先生のカンに触ったんですね。顔をつぶされた恨みは深い。しかも一度ならず二度、三度。(こういう解釈は制作者の意図とは離れているかもしれませんが、年をとるとつい「少しは相手の顔も立てなきゃ」と説教したくなります。この映画ではそれは新任教師の役目でしたが) ま、だからといって不公平な取扱いをするのは教育者として許されることではありません。しかし、そのような教師でも、いや、そのような教師であったからこそ教わるべきものがありました。それは何か。

 比較的新しい映画なのであまり詳しくストーリーを述べるのは控えますが、エリナ役の少女もお母さんも役柄にぴったりした自然な演技でした。それと妹役のちょっとおしゃまな女の子もよかったですね。自然の風景も興味深いものでした。いくつかの賞をとったそうですが、まさに賞に値する映画です。この監督はもうひとつ「ÄideistÄ Parhain」という作品でも賞を取っています。実は先にこの映画を見ていたのでそれをご紹介するつもりだったのですが、きのうこの「Elina」で感動したものですからつい前後してしまいました。この「ÄideistÄ Parhain」は文字通りの意味では母の極みとでもいいましょうか、二人の母のうちどちらの愛が深かったかという古来よりソロモン王の裁きや大岡裁きでも知られる話です。時代は「エリナ」よりやや前の戦時中、戦禍から免れるためやむなくスウェーデンの家庭に息子を預けるフィンランドの母子にまつわるストーリーです。

成人となった息子が過去を振り返ります。自分は母に二度捨てられた。スウェーデン人の母と、フィンランド人の母と。しかし、かれらは本当にかれを捨てたのか。

母を二度失った子と子を二度失った母。母親の切なさがしみじみと伝わってくるじつに味わい深い映画でした。

 

 

 

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